【話題】最盛期には毎年1000億円が韓国へ送金された…統一教会が日本で大金を稼いだ「収奪のメカニズム」



統一教会はどうやって信者を獲得し、金銭を集めているのか。社会学者の橋爪大三郎さんは「まじめで知力の高い若者ほど統一教会の教義に共感しやすい。まもなく神の王国が建設される、と信じさせることで、信徒の時間とエネルギーと金銭を際限なく提供させている」という――。

※本稿は、橋爪大三郎『日本のカルトと自民党 政教分離を問い直す』(集英社新書)の一部を再編集したものです。

■マルチ商法は本人が儲けるつもりで参加する

いわゆる霊感商法は、マルチ商法と違って、もっと悪質で組織的な犯罪である。

商取引は、売り手、買い手の双方の合意(契約)によって成立する。その際、商品についての情報が正しく伝えられていること、合意(契約)が任意になされること、などの条件が満たされている必要がある。相手を騙せば、詐欺になる。

マルチ商法は、ネズミ講と類似していて、新規の加入者を募り、ネットワークが拡大していくと、早くに加入していたものが配当を受け取り、儲かる仕組みとなっている。ネズミ講はただ出資するのだが、マルチ商法の場合は、商品を買い取る商取引の外見をとっている。

マルチ商法は、取引きの仕組みの説明を受け、本人が合意して、儲けるつもりで参加する。結果的に儲からず、大部分のひとは被害に遭う。

■「不幸から逃れられる」と騙す霊感商法

霊感商法の場合は、ネットワークは存在せず、ターゲットとされた顧客が、本来なら買わなくてもいい商品をつぎつぎ高額で買わされてしまう、というやり方である。

なぜ買わされるのか。統一教会(*)の信徒がチームをつくって、顧客の心理をたくみに操り、どうしても商品を買わなければならない心理状態にさせてしまうのである。

顧客は、統一教会の信仰を持つわけでも、その世界観をシェアするわけでもない。売り手が統一教会であることを、そもそも知らないかもしれない。しかし、先祖の祟(たた)りだとか、本人が理解できる不幸の原因を吹き込まれて、それを逃れられるならばと、商品を買う。あるいみ合理的に、非合理な行動をしているのである。

対する売り手のチームは、相手を騙しているという一致した認識を持っている。そして、統一教会の信仰を共有している。統一教会は資金が必要だ。資金を集めるのは正しいことだ。だから教団の任務として、また、信仰を持つ者の義務として、チームとして行動する。そのためのマニュアルもある。売り手のチームの人びとも、合理的に行動している。

この組み合わせが霊感商法だ。

霊感商法は、マルチ商法と違って、どこまでも自分で拡大していくメカニズムを持っていない。代わりに、つぎつぎ獲物となる顧客を見つけなければならない。反社会的な販売方法なので、社会問題となる。そして、早晩、行き詰まる。

*正式名は世界基督教統一神霊協会。いまは、世界平和統一家庭連合と名前を変えている。新聞などは「旧統一教会」と表記するが、本稿では歴史を尊重して、統一教会Unification Church)と呼ぶ

■自分や家族中心の世界から、外の世界へ

そもそもなぜ、多くの若者が、こうしたカルトの一員となるのだろうか。

それは、若者が若い時期に共通に経験する、精神世界の形成と世界観の獲得に関係する。

子どもは家族の一員として育ち、家族に依存している。

次第に、友人との社会関係に、軸足を移す。仲間に受け入れられるかどうか。はじめはおっかなびっくりだ。そして、仲間との結束を優先し自分を犠牲にすることができるなら、このプロセスは完成する。そして、それを経由して、最終的には、

自分(自分の世界)――家族――社会集団(仲間の世界)――世界(世界観)

という精神世界の広がりを手に入れる。これが大人だ。

日本の学校では、部活やサークルが大きな意味を持つ。子どものころからの世界を打ち破る社会集団として大事なのだ。部活には、甲子園やインターハイなどの目標がある。その目標に、かなりの時間とエネルギーを使って、みなで献身する。自分や家庭を中心にした世界を乗り越え、社会的な能力を手に入れる。

■卒業できないカルト宗教の有害性

部活やサークルは害が少ない。卒業してしまえば、解放される。それに経済や政治や宗教と切り離されている。どんな経済活動をするかは、本人の就職の問題。どんな政治思想や宗教を選びとるかは、本人がどんな世界観を身につけるかの問題である。

学生運動も、部活やサークルと似たところがある。学生運動は、政治と関係あることになっている。けれども卒業し、就職してしまうと、たいてい学生運動と関係なくなる。

統一教会のようなカルト的な宗教団体は、これと異なる。第一に、卒業がない。いったん加入すると、離脱しない(できない)仕組みになっている。第二に、資金集め(経済活動)をさせられる。社会的な非難を浴びるかもしれない。第三に、宗教団体は特有の世界観を持っている。それを受け入れることが求められる。要するに、青年期に必要な社会集団(仲間の世界)も世界観もいっぺんに与えられて、当人の半生を包み込んでしまうのである。

カルト的でないふつうの宗教は、こうしたことがない。ふつうの宗教は、経済とも政治とも無関連化されている。その宗教を選び取って、世界観に組み込むとしても、経済や政治やそれ以外の領域を、自分の考えによって組み立てなければならない。つまり、害がない。

■標的となるのはまじめで知力の高い若者

ではどんな人びとが、統一教会に引き込まれるのだろうか。

きっかけは、街頭のアンケート調査とか、友達にビデオ・セミナーに誘われたとか、いろいろであろう。総じて言えば、統一教会に引き込まれるのは、まじめで知力の高い若い人びと、つまりごくふつうの人びとである。

統一教会は、性にこだわり、性が堕落と罪の始まりであるとし、純潔を強調する。消費社会の爛熟(らんじゅく)や歪んだ性文化に眉をひそめるタイプの若者は、この教えに共感を覚える。また統一教会は、聖書の解釈というかたちで、体系的な世界観を提供する。キリスト教や聖書になじみのなかった若者は、キリスト教っぽい外見を真に受けて、その教義を受け入れてしまう。

統一教会は、部活やサークルのノリがある。信徒を増やすことは、組織の目的でもあり信徒の実績にもなるので、みなとても親切だ。有田芳生『改訂新版統一教会とは何か』(2022年、原著は1992年)は、献身(専従者となること)してニセ募金や霊感商法に日々を送った当時の、元信徒の日常を生々しく描いている。

■統一教会の技法は「洗脳」とまでは言えない

アメリカキリスト教カルトの反社会的事件が問題になり、教団から連れ戻した若い信徒を「脱洗脳」する専門家が現れた。キリスト教の牧師やソ連の洗脳の技術に詳しい臨床心理学者らである。

カルト宗教が人びとを信じさせるのが洗脳なら、信じさせられた人びとに責任はない。でもそのかわり、信徒であった当時の人格は、本人の人格と認められないことになる。これはこれで、辛(つら)いものがあるだろう。

統一教会の場合、人格改造セミナーのような技法を使うとは言え、洗脳であるとは言いにくい。それは、宗教の枠内にとどまっており、本人の納得と同意にもとづいて、教団の活動に従事させている。本格的な洗脳の技法で、本人の人格を操作しているとまでは言えない。

それなら、統一教会の反社会性は、どこにあるのか。

■信徒は文鮮明が主宰する世界に閉じ込められる

それは、統一教会が、「地上の神の王国」という、経済と政治と宗教にまたがる閉じた世界観を提供し、その内部に信徒を閉じ込めるところから生まれている。

先の図式で言えば、統一教会が提供するのは、社会集団(仲間の世界)=世界(世界観)という閉じた世界であり、その世界を、再臨のメシア(文鮮明)が主宰している。信徒はそこで、生きる意味と価値を与えられる。よってそこから、抜け出すことができにくくなる。

この閉じた世界は、信徒から、時間とエネルギーと金銭を吸い上げる。信徒がそれを提供しておかしいと思わないのは、そうした貢献は、意味があり、価値があり、「地上の神の王国」を実現させるためである、と信じるからだ。「地上の神の王国」が実現するなら、そうした努力と献身は報われる。「地上の神の王国」は、甲子園やインターハイが大がかりになったようなものなのだ。

■時間とエネルギーと金銭を収奪するメカニズム

統一教会は、大規模で体系的な収奪のメカニズムをこしらえた。とくに日本で。

これは、周到に計画されており、反社会性が高い。カルトの条件にもぴったりあてはまる。それがどんなメカニズムなのか、整理してみよう。

収奪の第一。信徒の時間とエネルギーと金銭をいくらでも提供させる。

なぜ統一教会の信徒は、時間やエネルギーを教団に提供するのか。それは、メシアが到来して、まもなく神の王国が建設される、と信じるからである。

人間は、信仰のため、あるいは自分の信じる価値のため、時間とエネルギーを用いる。それなりの金銭も提供する。当たり前のことである。

統一教会の場合、それが極端である。学校をやめ仕事をやめ、すべての時間とエネルギーを提供することが望ましいとされる。実際にそうする人びとも多い。それは、望ましいだけではなく、義務である。

なぜなら、神の王国は、神が100パーセント自分の手で建てるのではなく、人間の協力と献身も必要だからだ。人間の力が合わさらないと、この世界は完成しない。文鮮明の主要著作『原理講論』の説く神学である。だから時間もエネルギーも金銭も、自分の持てるすべてを投入する。その見返りは、信仰をまっとうしたという満足感だ。

統一教会が信徒に求める信仰と献身は、度を越している。信徒が通常の社会生活を送るのをむずかしくする。家庭や社会にマイナスをもたらす。カルトの定義に、ぴったりあてはまる。収奪なのは明らかだろう。

■ワゴン車で農村を巡るニセ募金キャラバン

収奪の第二。一般市民を騙して金銭を収奪する。

統一教会は、金銭をかき集めようという要求が、ほかの新宗教と比べてもケタ違いに強い。ノルマを信徒に割りあてる。集金のための活動も組織している。有田芳生『改訂新版統一教会とは何か』から紹介しよう。

ニセ募金の場合。……信徒数名がチームとなって、ワゴン車で寝泊まりしながらキャラバンで農村を回る。身元を明かさず、適当な慈善募金の名目で、1軒ずつ署名を集めて回る。地図をもとにルートを決める。村外れの家から始め、1000円を寄附してもらえると、あとは横並びで寄附してもらえる。集まった募金は大部分を教団に上納する。自分たちの食費にもあてる。ごく一部は寄附されるかもしれない。信徒は朝から晩まで、ほとんど寝る間もない。

ほかに、珍味販売などのキャラバンもある。その日のノルマに達しないと、夜は繁華街で遅くまで販売を続ける。

霊感商法の場合。……印鑑展や壺・多宝塔の展示会でゲスト(犠牲者)を集め、ビデオ・セミナーのあと霊界を信じるか、貯金の額などを聞き出す。トーカー(霊能師役)、ヨハネ役(先生を証(あかし)する役)、などと手分けをして、ゲストを説得する。先祖の因縁などと言いくるめるのだ。1000万円以上の貯金があるゲストをS客といい、なかには1億円出すゲストもいた。

■「罪を犯した日本が献金するのは当たり前」

収奪の第三。日本から韓国に送金する。

統一教会の活動資金の大部分は、日本から韓国への送金でまかなわれた。最盛期には毎年1000億円。数百億円だった時期も長かった。それらすべては、日本の信徒の献身と、被害者の犠牲によってまかなわれたのである。目標どおりに資金を集められれば、統一教会の専従職員は上司に評価されただろう。

このほか合同結婚式に参加する際にも、50万円とか150万円とかの現金を持参するようにとも言われる。

日本はエバの国だと、『原理講論』に書いてある。だから、献金するのは当たり前なのである。韓国の人びとの歴史認識にも合っている。

■潤沢な活動資金を稼ぐ三段ロケット

以上をまとめると、こうなる。

A 信徒の時間とエネルギー(無償労働)

B 一般市民の金銭を巻き上げる(集金マシン

C 韓国へ送金する(送金マシン

全体は、三段構えのロケットになっている。

第一段(A)は、信徒の無償労働でまかなわれている。ビジネスで言えば、賃金を支払わないのだから、売上げがそのまま収益になる。丸もうけである。第二段(B)は、その燃料(信徒の無償労働)をなるべく効率的に、現金に変換する。それは、一般市民を騙して金銭を巻き上げることだ。第三段(C)は、韓国への送金。送金された潤沢な資金は、統一教会の関連企業に投資されたり、政治工作資金になったり、そのほかの活動資金になったりするのだろう。

■ふつうの人が集金マシンの歯車になっている

日本のメディアはしばしば「霊感商法」(だけ)を、統一教会スキャンダルとして取り上げる。社会常識にも道徳にも反する、と。それはそうだが、霊感商法(B)を、全体の文脈のなかに置いてみなければならない。そもそも霊感商法は、信徒が組織的に行なう活動である。信徒は「正しい」と思って、この活動に従事する。信仰とその世界観が、それを可能にする。

霊感商法の個々の手口が悪質かどうか、が問題なのではない。ふつうの人びとが統一教会の信徒となることで、こうした組織活動(組織犯罪と言ってもよいレヴェルである)に積極的に参加し、この集金マシンの歯車となることのほうがずっと問題だ。

そして、このような集金マシン日本国内で大量の資金を調達し、それを毎年韓国に送金していること(その一部は、北朝鮮に流れているかもしれないこと)が、ほんとうの問題だ。

かつてこの問題を、当局が調査しようとしたとき、「政治の力」が働いてストップさせた。その「政治の力」(当時の自民党首脳)は、国益と社会正義に害をなすきわめつきの犯罪者だと言わなければならない。

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橋爪 大三郎(はしづめ・だいさぶろう
社会学者
1948年神奈川県生まれ。大学院大学至善館教授。東京工業大学名誉教授。77年東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『皇国日本とアメリカ大権』(筑摩選書)、『中国VSアメリカ』(河出新書)など著書多数。共著に『ふしぎなキリスト教』(大澤真幸との共著、講談社現代新書、新書大賞2012を受賞)、『おどろきのウクライナ』(大澤真幸との共著、集英社新書)『中国共産党帝国とウイグル』(中田考との共著、集英社新書)など。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio


(出典 news.nicovideo.jp)

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名無しさん

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立正佼成会がやっていた事をまんまパクったのが日本版統一教会の霊感商法。その立正佼成会はまだ健在だぞ

shelly

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日韓トンネルの財団も同じとこだぞ