【政治】「少子化より深刻では!?」手取り16万円…非正規・氷河期世代の「親の介護問題」公的制度の限界と「想像を絶する現実」



岸田首相が施政方針演説で「異次元の少子化対策」に言及したことが話題になっていますが、社会の高齢化に伴う「親の介護問題」も、重要な問題です。特に、いわゆる「団塊ジュニア」と就職氷河期世代とがかなり重なりあっていることが想定され、問題は今後、さらに深刻化する可能性があります。本記事では、介護と仕事の両立をサポートするための現行の諸制度と、今後の課題について解説します。

給与の3分の2を受け取れる「介護休業給付金」

介護と仕事を両立できる制度として、まず知っておくべきなのは、「介護休業給付金」の制度です。

介護休業給付金は、雇用保険に基づく制度で、家族の介護のために仕事を休業したら、給与の3分の2(約67%)を受給できるものです。

1家族あたり93日を限度として、合計3回まで受給することができます。

◆介護休業給付金の受給要件

介護休業給付金の受給要件は、以下の2つです。

1. 常時介護を2週間以上必要とする状態にある家族(配偶者(事実婚状態を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)を介護するための休業

2. 期間の初日と末日を明らかにして事業者に申し出る

実際に休業する日数については2週間未満でも差し支えありません。たとえば、家族の介護をするために2人で交代して合計14日間以上取得する場合や、介護が必要な14日間のうち数日間、他の人に介護を依頼する場合も認められます。

「常時介護を必要とする状態」は、以下のいずれかをさします。

・要介護2以上の認定を受けている

・【図表1】の状態(1)~(12)のうち、「2」が2つ以上、または「3」が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続している

なお、「93日」という期間は、介護に関する長期的方針を決めるために必要な期間と想定されています。

◆非正規社員も取得できる

介護休業給付金は、正社員、非正規社員問わず、取得することができます。

ただし、受給資格の基準は異なります。以下の通りです。

1.正社員:引き続き雇用された期間が1年以上

2.非正規雇用の労働者:労働契約の期間が、介護休業開始予定日から93日経過日から6ヵ月後までに満了することが明らかでない

◆就業規則の定めがなくても利用できる

介護休業および介護休業給付金の制度は、勤務先の就業規則に規定されていなくても、要件をみたせば利用できます。なぜなら、これらは法律上の制度だからです。

労働者から申し出があった場合には、勤務先は拒否することができません。また、介護休暇を取得したことを理由とする不利益な扱いをすることも禁止されています。

介護休暇の制度と受給要件

介護休業とは別の制度として、「介護休暇」の制度があります。

これは、家族が2週間以上にわたって常時介護を必要とする状態にある場合に、介護のため、ふつうの有給休暇(年次有給休暇)とは別に取得できる休暇をさします。

1年度あたり原則として最大5日間取得できます。ただし、介護の対象となる家族が2名以上の場合は10日間取得することができます。

また、1日単位だけでなく、時間単位での取得も可能です。たとえば、通院等の付き添いや、介護サービスの手続の代行、ケアマネジャーとの短時間の打ち合わせのために利用できます。

介護休業制度と同様、法律上の制度なので、勤務先の就業規則に規定されているか否かを問わず取得できます。もちろん、雇用主は介護休暇の取得を拒否できず、介護休暇の取得を理由として不利益な扱いをすることも禁じられています。

ただし、有給休暇と異なり、勤務先に規定がなければ、その分の給与を受け取ることができません。その場合は、事実上、有給休暇を使い果たしてから介護休暇を取得せざるを得ないことが想定されます。

また、以下の労働者は対象外です。

・入社6ヵ月未満の労働者

・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

制度のさらなる拡充が急務

今後、高齢化の進行により、仕事と家族の介護の両立の問題はさらに深刻化することが予想されます。

どういうことかというと、2024年には、いわゆる「団塊」の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となります。そして、「団塊ジュニア」のボリュームゾーンにあたるのが「就職氷河期世代」です。

就職氷河期世代の非正規で働く人々の平均年収のデータをみてみましょう。厚生労働省の「令和3年(2021年)賃金構造基本統計調査」によれば、「40歳~44歳」で21万円、「45歳~49歳」で20.9万円、「50歳~54歳」で21.2万円、「55歳~59歳」で21.0万円となっています。

これは、手取りにすると月約16万円に相当します。食べていくのに必死なうえに、親の介護の負担がのしかかることになります。

就職氷河期世代の人々は、他の世代よりはるかに過酷な境遇におかれてきたにもかかわらず「自己責任」「自助努力」を過剰に求められ続けてきました。社会のモラルとして、これ以上の「自己責任」「自助努力」を要求するわけにいかないのはあきらかです。

政府・国会には、最低限、介護と仕事を無理なくできる制度のさらなる拡充に今すぐにでも着手することが求められているといえます。

(※画像はイメージです/PIXTA)


(出典 news.nicovideo.jp)